灌流画像

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灌流画像とは

灌流 Perfusion

一般に灌流(Perfusion)とは,組織の毛細血管あるいはそれに準ずる機能血管系の血流を表わす医学用語で,必ずしも厳密な定義はない.この点,しばしば対比される組織拡散(Diffusion)が物理学で定義される用語であることにおいて異なっている.脳の場合,従来より用いられてきた脳血流(cerebral blood flow, CBF)とほぼ同義に用いられることが多い.

灌流画像法 Perfusion imaging

灌流画像法(Perfusion imaging)は,上記の意味での灌流を画像化する技術の総称であり,すなわち毛細血管レベルの組織血流を,定量的あるいは半定量的に画像化する方法である.原理的には,組織の上流側,すなわち動脈側で血流に何らかの目印をつけ,これが組織を通過してゆく様子を観察すれば灌流の状態を知ることができる.実際には目印として,動脈内にトレーサ(tracer)を注入し,これを様々な方法で追跡するのが一般的な方法である.

CT灌流画像によるCBFマップ

いろいろな灌流画像法

実際の検査法としては,下記に挙げるような方法があり,それぞれの得失をあわせて示す.

  トレーサ 低侵襲性 利便性 定量性 空間分解能 その他
CT灌流画像 ヨード造影剤    
MR灌流画像 Gd造影剤     拡散強調画像も撮影可能
SPECT 放射性同位体      
PET 放射性同位体     酸素消費量/摂取率も測定可
Xenon CT Xeガス       

CT灌流画像(CT Perfusion Imaging,CTP)

水溶性ヨード造影剤を末梢静脈から急速静注し,脳の水平断CTを繰り返し撮影することにより,CT値の経時変化から局所灌流を計測する.標準的なCT装置と解析ソフトウェアがあれば,頭部単純CTに引き続いていつでもどこでも施行できること,が最大の利点で,このことは特に血栓溶解療法の適応決定において大きな意味をもつ.CTPは,正常脳組織における造影剤の非拡散性(non-diffusibility),すなわち造影剤が脳血液関門(BBB)を通過しないことを前提としており,BBBに異常をみる病態で定量性を求める場合には特別の配慮が必要となる.また,X線被曝に充分して検査条件を設定する注意する必要がある.

MR灌流画像(MR Perfusion Imaging,MRP)

ガドリニウム造影剤を末梢静脈から急速静注し,これが組織内の血管を通過する際に血管外組織の水分子におよぼすT2*緩和促進作用による信号低下から局所灌流を計測する.造影剤濃度と信号強度の間の線形性が保証されないため,定量的データは得にくいが,並行して拡散強調画像を撮影できる利点がある.このほか,造影剤を用いずに反転パルスによるラベリングを利用する方法(FAIR法)などもあるが,SN比に乏しいため研究段階にとどまっている.造影剤とBBBの関係については,CTPと同様である.

SPECT

133Xe, 123I-IMP, 99mTC-HMPAO, 99mTc-ECDなどの放射性核種を末梢静脈に静注し,SPECTで脳組織への分布を測定する.空間分解能に乏しいが,Xe,IMPは血管内から脳組織内に拡散して分布し,HMPAO, ECDは脳組織内に捕捉されてとどまる.核医学設備を必要とするが,灌流画像法としては最も歴史が古く,各種臨床病態について豊富なデータが蓄積されている.

PET

ポジトロン放出核種15O, 15CO2, 15COなどの標識ガスを投与してPETを撮影する.まだ利用できる施設は限られているが,現在利用可能な灌流検査法の中では最も定量性に優れること,および酸素摂取率,エネルギー代謝率などを同時に測定できる利点がある.

Xenon CT

非放射性Xeガスを吸入すると,Xeは血中に移行し,さらに脳組織内に拡散する.Xeは原子番号が54と大きいため組織のCT値が軽度上昇するが,この増強効果と組織中Xe濃度との間には線形関係があることから,脳血流を定量できる.Xeガスならびにこれを供給するための閉鎖回路装置が必要とされること,Xeガスに興奮作用,麻酔作用があるなど利用しにくい側面があるが,PETと並んで定量性に優れる.X線被曝にも充分な配慮が必要である.