灌流画像 > MR灌流画像 (MRP)

MRPの原理

MRIによる灌流計測法は,下記の2つの方法に大別される.
   (1) DSC法 (Dynamic susceptibility contrast):ガドリニウム造影剤の投与による磁化率効果を利用する方法
   (2) ASL法 (Arterial spin labeling): 流入血流にパルスを照射して標識をつける方法

DSC法

DSC法によるMR灌流画像(MRP)は,基本的にCT灌流画像の原理と同じで,ガドリニウム造影剤を静注して計測する.静注された造影剤が流入血管ならびに脳組織内を通過する際の時間−濃度曲線が得られれば,同様に各種血流パラメータを求めることができるはずである.ただし,CTPでは造影剤濃度と画像濃度の間比例関係を想定することができるが,MRPではそれほど単純ではない.

ガドリニウム造影剤は常磁性体であるため,血管内を通過するとき,周囲組織との磁化率の差に基づく磁化率効果(susceptibility effect)により,T2強調画像あるいはT2*強調画像において信号強度が低下する.この信号低下率と造影剤濃度の関係を知ることができれば,血流パラメータを求めることができる.

時間tにおけるボクセル内の造影剤濃度と信号強度の関係は,一般に次の式で表わされる.
   C(t)=k・ΔR2*=-k・ln [S(t)/S(0)] / TE
      C(t):時刻tにおける造影剤濃度
      ΔR2*: 造影前後のT2*緩和速度(=1/T2*)の変化
      S(t):時刻tにおける信号強度
      TE:エコー時間
      k: 定数

こうして,信号強度から換算された脳組織,流入血管それぞれの時間−濃度曲線を得ることができれば,CTPの場合と同様,deconvolution法などの方法を用いてCBF, CBV, MTTの各種パラメータを求めることができる.ただし,定数kは,組織,造影剤,磁場強度,撮像シーケンスなどに依存するため,絶対値を求めることは難しい.

DSC法では,T2*,T2ともに短縮するため,Gradient echo(GE)法,Spin echo(SE)法のいずれでも可能である.いずれを選択するかについては議論のあるところだが,GE法は信号強度の変化率が大きい利点がある一方,径数mm単位の太い血管内の血流の影響も受けることが問題となる.一方,SE法は最小血管の血流の影響のみを反映することから,毛細血管レベルの組織血流の測定にはSE法が適していると考えられる.


DSC法:
時間−信号強度の一例.磁化率効果によって信号強度は低下する.

ASL法

ASL法は,計測部位の上流側にRF波を照射することにより流入血流内のスピンを標識する方法である.DSC法が外因性トレーサであるガドリニウム製剤を使用して標識するのに対し,ASL法は内因性トレーサを使用する方法であるともいえる.スピンタギング(spin tagging)法ともいう.

RF波による標識には,連続波,パルス波のいずれかを使用し,それぞれContinuous ASL(CASL)法,Pulsed ASL(PASL)法と呼ばれる.歴史的にはCASL法がまず試みられ,現在ではPASL法が一般的であるが,基本原理は同一なので,以下には比較的理解しやすいCASL法について解説する.

スピンの挙動を表わすBloch方程式に,フローを加味すると,下記のようになる.
  dMz(t)/dt = (M0-Mz(t))/T1b + fMa(t) - f/λ・Mv(t)
       Mz(t):脳組織の縦磁化
       M0:完全に縦緩和した状態の最大縦磁化
       Mb, Ma, Mb:それぞれ脳組織,動脈,静脈の磁化
       T1b:脳組織のT1値
       f:血流量
       λ:水の血液−脳組織間分配係数

これから,右図のように撮像面の上流側に反転パルスによる標識を加えるとき,標識されたスピンは,脳組織の毛細血管内で組織内の標識されていないスピンとの間に交換がおこる.撮像面内における磁化と血流の間には,次の関係が成り立つ(ここには結果のみ示すが,詳細は下記の文献を参照されたい).
   f=(λ/T1app)(Mc-Mi)/2Mc
       T1app:標識された血液によって変化した見かけのT1値
       Mc:反転パルスをかけない場合の縦磁化(信号強度)
       Mi:反転パルスをかけた場合の縦磁化(信号強度)

従って,反転パルスをON,OFFした状態の画像,および反転パルスをONにした状態のT1マップが得られれば,血流fを計算することができる.また,分配係数λを理論的に仮定すれば,血流の絶対値を得ることが可能である.

しかし,実際には撮像面内のMagnetization transfer effectによる信号低下,および標識領域と撮像領域の時間差によるT1緩和を避けることができず,またその量を見積もることが難しいことが問題となる.また,CASLの場合は反転パルスの照射時間が長いことから,SAR負荷も問題となる.

これらの問題を,少なくとも部分的に解決する方法として,撮像面の直前でパルス状に標識するPASL法であるEPISTAR法*1,撮像面を含む広い範囲を非選択的反転パルスで標識した後で計測部位を選択的に励起するFAIR法*2などが実用化されている.
   *1EPISTAR = Echo planar imaging with signal targeting and alternating radiofrequency
   *2FAIR = Flow-sensitive alternating inversion recovery



ASL法:
計測面の上流側で反転パルスを照射することにより流入血管内のスピンを標識する.

《参考文献》

MR灌流画像全般

Petrella JR. et al. MR perfusion imaging of the brain: Techniques and applications. AJR 2000;175:207-219
Calamante F, et al. Measuring cerebral blood flow using magnetic resonance imaging techniques. J Cereb Blood Flow Metab 1999;19:701-35

DSC法の原理

Wirestam R, et al. Assessment of regional cerebral blood flow by dynamic susceptibility contrast MRI using different deconvolution techniques. Magn Reson Med 2000;43:691-700

CASL法の原理

Williams DS, et al. Magnetic resonance imaging of perfusion using spin inversion of arterial water. Proc Natl Acd Sci USA 1992;89:212-6

DSC法とASL法の比較

Weber MA, et al. Comparison of arterial spin-labeling techniques and dynamic susceptibility-weighted contrast-enhanced MRI in perfusion imaging of normal brain tissue. Invest Radiol 2003;38:712-8